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武内どうぶつ病院 ブログ

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歯周病の正体(お口がにおう)

過去にも書きましたが、歯のお話しを書こうと思います。

犬や猫たちの口臭の原因といえば、歯石が一番に思いつきますね。

下の写真は一見すると、歯にはさほど歯石は付着していません。
歯周病の正体(お口がにおう)_e0271367_1713073.jpg

重要なのは、歯の表面よりも歯茎との境界部や、歯を支えているアゴの骨(歯槽骨と言います)の状況分析が大切です。
自動車に例えれば、歯の表面汚れをとっただけでは、「洗車だけして、エンジンや足まわりの点検をせずに整備を終了するようなものです」歯周ポケットと言われる部分の処置は「歯科処置ではきわめて大切です」


歯根部膿瘍
といって、簡単に言うと、「歯の根っこ部分が腐ってしまっている」状態です。もっと正確に表現するならば、歯自体が腐っているのではなく、歯の根を支えているアゴの骨が腐って溶けてしまっているのです。
前歯に生じるとクシャミがでたり、奥歯に生じると目やにが出るようになったりします。
一見、歯とは無関係に見える症状が、サインだったりします。

これは、犬の頭蓋骨の解剖学的構造に由来します。
歯根(歯の根っこ)の先端は、鼻腔や眼窩(目玉がはいっている骨のくぼみ)の部分に極めて近くに位置している事から生じるものです。

お口が臭う、鼻先を気にしてこすっている、
クシャミをする、鼻から濁った鼻汁が出る、
目やにが出る、などの症状がでていたら
要チェックです。


一見普通に見えますが、、、、


歯周病の正体(お口がにおう)_e0271367_171328100.jpg

     ↑器具の先端が、こんなに奥まで挿入できます。
      (一番上の写真と比べてみて下さい)

       このあとウミが多量にでてきました。

↓2本の歯を抜歯した後に、腐肉(壊死した歯肉や骨)を切除しキレイにした後、歯科抗生物質を充填して歯肉縫合しました。
歯周病の正体(お口がにおう)_e0271367_17162532.jpg


↓この子は上の子とは別のわんちゃんですが、「目の下の脱毛」が来院された理由です。診察の結果上顎臼歯(奥歯)に歯根部膿瘍の存在がわかりました。歯科処置を実施し、今では元のように発毛し脱毛域は消失しました。
歯周病の正体(お口がにおう)_e0271367_17144310.jpg

若干、眼の充血もあることもポイントでしょうか。
歯周病の正体(お口がにおう)_e0271367_1332239.jpg

上写真は、術後の様子です。
奥歯が酷い歯周病のため、抜歯をおこないました。処置後、20日程でもとの皮膚にもどりました!

歯周病は「単純な歯の汚れではありません」。
歯垢(しこう)は「食べカス」ではありません」
歯石(しせき)は「食べかすが固くなった物でもありません」
これらは「口腔内の感染症」です。



放置しておくと歯を支えるアゴの骨を溶かす病態へと進む「過程」
なのです。重度になるとアゴ、とくに下アゴの骨は骨折することがあります。まさか、歯周病でアゴの骨が折れるなんて!と思うと思いますが、これが「歯周病」の正体です。

※ 歯科処置はそれほど敷居の高い検査、治療ではありませんので、気楽に診察を受けて頂きたいと思います。

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by takeuchi-ah | 2015-11-22 09:00 | 病気

さいたま市大宮区天沼町1-84-3 tel 048-871-8025


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